グルニオンGrunion,Leatresthes tenuisの卵と稚仔魚及びコウイカの孵出について

発行年・号

1959-01-01

文献名

飼育下グラントシマウマの発情日数と発情周期

所 属

江ノ島水族館

執筆者

広崎芳次

ページ

17

本 文

広島市安佐動
グルニオンGrunion,Leatresthes tenuisの卵と稚仔魚及びコウイカの孵出について

江ノ島水族館 広崎芳次

グルニオン及びコウイカの表題の件については、既に月報でニューズとしてその一端を報告したが、その際詳細については後日改めて記すことを約したので茲に報告することとする。

1グルニオンの孵出と稚仔魚

孵出:5月24日にグルニオンの孵出させることを試みた。卵のまじっている砂を一つまみ、海水の中に入れたところ、卵の表面をおおっていた無数の小砂粒はいっせいに卵からはなれた。水の中に入れて約1分後に2尾孵出し、その他のものも相ついで孵出した。ほぼ満潮の時間にあたる2時間のうちに30gの砂の中から270尾のグルニオンが孵出した。
2時間以上たって出したものは1尾のみで、これは水に入れてから2時間10分を要した。孵出しなかった卵は70粒、以上のほかに孵出はしたが孵出直後死亡した個体が20尾あった。
このことから送られてきた砂1gの中に、卵が12粒含まれていたことになり、361粒の卵のうち291粒81%が孵出し、271粒75%が孵出游泳したことになる。この時の水温は21℃、pHは7.9、比重は1.023であった。
稚仔魚;出直後の点は、全長8~9mmで表層を活発に游泳する。
ブライン、シュリンプをはたして食べることができるかどうか危ぶんだが、与えてみたところ2日後に捕食する個体が見られ、3日後には、すべての個体がさかんにとらえ食べたので、ブライン、シュリンプを餌として与えることにした。
飼育水槽には従来の方式だと排水孔に吸いこまれたり、ストレーナーにひっかかってしまうおそれがあるので、水槽底全面から吸水する内式循環水槽を用い循環率を毎時2回とした。
グルニオンの仔魚は、顕著な遮光性をもっており、また表層のみを游泳する。水槽底を稀に泳いでいるものがあったが、このようなものは翌日には死亡するものが多かった。しかし6月13日ごろになると表層にかたまっていたものが中層に分散するようになり、大きなものは約15mmに達し、200尾ほどを数えた。このころになるとブライン、シュリンプのほかにシオダマリミチンコも多量に与えた。
6月24日になって、数日前より微候のみられた白点病のために殆んどの個体が斃死した。7月10日に最後の2尾が白点病とくる病様の症状を呈して死亡した。瞬出後48日目であった。

2コウイカの孵出
6月8日朝、江ノ島の定置網にかかっていたコウイカの卵約80ケをもらいうけた。入手直後ぞくぞくと瞬出し56尾を数えた。体は透きとおっていて甲板が白く円形なのが判る。解出直後は水槽の底に静止しているが、つつくとすみをはいて移動する。
10日になって1尾が表層を游泳し他は依然と摂餌動作と思われるような働きをするものが多いが、摂餌は確認できない。コウイカの体色素は顕著となり、当初見えていた白色の甲板はみえなくなった。アジの切身、牛又は豚の肝臓を与えたが反応は全くなく、無理に近ずけると逃げる。
13日30尾浮上、表層特に水槽ふちを遊泳、56尾全個体生存。
16日12時水温24.2℃ブライン、シュリンプを依然としてたべない。17日pH7.8コウイカ2尾のみ砂底に静止、他は表層に浮上、浮上個体中22尾は死亡していたので、水槽を掃除し注意したが翌18日に全滅した。餌付の失敗によるものと思われる。