動物の交換寄贈等について各園の取扱方法,アメリカの動物園と水族館

発行年・号

1960-02-03

文献名

飼育下グラントシマウマの発情日数と発情周期

所 属

福岡市立動物園,神戶王子動物園

執筆者

香川 勇,山本 鎮郎

ページ

71~73

本 文

広島市安佐動資料
動物の交換寄贈等について各園の取扱方法
福岡市立動物園
香川 勇
THE LEGAL BASIS FOR ANIMAL EXCHANGE AMONG ZOOS IN JAPAN
Isamu Kagawa, Fukuoka Zoological Gardens
総括
各地動物園の取扱規定をみるに、明確な法的根拠はな いようである。
これは、動物を地財法第8条に規定する財産及各市財産条例による物品(動産)の備品或はその他の物として取扱っている。 よって特例により専決規定を設けて、価格を設定して園長決裁で取扱っている。又それ以上のものについては局長、市長の決裁をうけている。
結論
自治団体の経営する動物園としては、統一的見解として動物の交換及び生産品の交換、並びに寄贈等については、価格設定の上園長決裁で処理される事が一番適切な処置と思われる。
アメリカの動物園と水族館
神戶王子動物園 山本 鎮郎
ZOOS AND AQUARIUMS IN
THE U.S.A. AND CANADA
Shizuro Yamamoto, Kobe Oji Zoo
アメリカ動物園水族館協会が1958年10月に発行したアメリカ動物園水族館要覧によって、アメリカの動物園と水族館の概観を試みよう。
協会の調査によれば、北米合衆国とカナダを含めて、動物園水族館はその数現在約 200 園館であって、要覧にのっているものは 179 園館その内訳は次の通りである。
合衆国には圧倒的に 多く、しかる合衆国50州の中、カリフォルニヤ州18園館、フロリダ州22園館で、何れも1割以上を占めて他の州を圧している。
動物園水族館のない州は50州の中7州である。州によ って園館の数に差異のあるのは気候や人口、経済力といった要素、いいかえると地理的乃至は文化的要素によるものであろう。
収容動物の多少によって分けると、次の通りであって、200種以上の動物を収容する動物園は16園、その他200種までのものが86園で、過半数を占めている。約半数は 100 種類までのものである。この表に含まれていない園は、収容種類が不明であって、恐らくは50種未満のものが多いのではないかと思われる。それは殊に私立のものに多く、しかもワニ園、蛇園等いわゆる動物園に入れるべきかどうか疑わしいものもある。最近わが国にもモンキーセンターの様な特殊な動物園が現れたが、合衆国にもモンキージヤングルといった名称のものもあり、鳥を中心とするもの、或はオーカミ、シカといったものを収容している、いわば特殊の園がかなり多いのである。
一方水族館では、大部分が200種乃至300種であって、あまりその種類の多少に隔たりがなく、この意味ではわが国の水族館と大差がない。
上記の中、収容動物400種以上の10園について、その内訳を示すと第3表の通りである。
この表によればアメリカの動物園は爬虫類を相当重視していることが推定される。わが国では比較的哺乳類はそろっているが、鳥類、爬虫類のコレクションは哺乳類にくらべると劣っているといい得よう。しかしこれは大きな動物園と比較した場合であるが、コレクションの少 い、例えば100種乃至200種の動物園について見ても大体同様である。例えば第4表のようにこれには経済力以外に気候的の要素が大いに働いているとも考えられる。
次に経営主体には種々ある、この中で市立のものが約半ばを占める。その他カウンティ、ディストリクト、 州、あるいはこれらの地方団体が共同して経営しているものを公立とすれば、公立のものが圧倒的に多い。ついで多いのは私立のものである。約3割、中でも水族館には私立のものが多い。協会経営、市と協会、カウンティと協会の共同経営のものが合計動物園で18園、水族館で2舘ある。市と協会が経営するといっても、実際は協会が経営していて、市が赤字の面倒を見たり、あるいは市が所有している関係で、財源を与えているところが多い。
大きな動物園には協会経営で、市がパックアップしているもの、所有すれども支配せずといった形態が多いことは注意すべきである。
実際問題として、動物園のように、市民大衆が多く利用する施設では、できるだけ大衆の代表、又は運営に知識なり関心をもつ者が参画することが好ましいのであろう。
大学やアカデミー、博物館が運営に接触を保っているところがあるのは、その数は少いけれども興味のあることである。カルフォルニャ州ラジョーラ水族館、ハワイ、ホノルル水族館、プエルトリコ、マヤゲズ動物園等のごときである。
動物園について見ると市立園館の中、有料のものは4園に過ぎず、他は全部無料である。私立のものは大体において有料であり、協会経営のものには有料のものが多いが、1週の中何日かは無料のところがある。
わが国では無料の園館はほとんどない点と比べて見て公共施設の無償利用の原則がアメリカにおいてつらぬかれていることが分る。
なおこども動物園、アニマルショウなどについてもふれるべきであるが、次の機会にゆずることとする。