類人猿舎の観覧用スタンド新設と室内観客通路の改造について
発行年・号
1960-02-03
文献名
飼育下グラントシマウマの発情日数と発情周期
(THE REMODELING OF INNER AND OUTER VISITOR'S PASSAGES OF THE APE HOUSE OF THE UENO ZOO)
所 属
上野動物園
執筆者
古賀忠道・三橋伊三郎
ページ
65~66
本 文
広島市安佐動類人猿舎の観覧用スタンド新設と室内観客通路の改造について
上野動物園 古賀忠道・三橋伊三郎
THE REMODELING OF INNER AND OUTER VISITOR'S PASSAGES OF THE APE HOUSE OF THE UENO ZOO
Tadamichi Koga and Isaburo Mitsuhashi, Ueno Zoological Gardens
上野動物園の類人猿舎は、1957年旧河馬舎を改造し、現在ゴリラ(3頭)チンパンジー(3頭)オランウータン(2頭)を収容していますが、収容以来、動物たちは非常に健康ですが、なお不便の部分もありました。ことに公開以来、類人猿は特に観覧者の興味の的となり、従来の施設では混雑を極めるに至ったので、幾分でも混雑を緩和するために、運動場の前の観覧者通路と、室内檻のガラスの前の通路とを拡張することとしました。
外の運動場前の通路では、日曜等の入園者の多い日は、一番前の手摺の所にいる人たちは、長い間動ごこうとしないので、この3m巾の通路は客でうずまり、殆ど身動きもできなかったので、その後に観覧席を作り、なるべく効果的にするために、図の通り前の観覧通路よりの高さを90cmとし、両端並びに中央に階段を設けました。その奥行きは1.6mで、更にその後に、3段の、高さ15cmの階段を全面的に設け、前の2段は奥行30cm、一番後の段は奥行きを60cmとし、その後には、高さ1.4mの壁を設けました。(第1図、第2図)
その結果は、観覧者は少し混雑すると、すぐに後方の観覧台上に上り、しかも一番前の従来の通路は、以前よりも狭くなったにも関わらず、幾分混雑が緩和されたようで、効果の著しいものが認められます。
観覧席の脊部及びその下は南面しているので、ここに金網張の鳥檻Aviaryを作り、鳥類を収容しました。特に階段下はその寝室となるので、ガラス戸を設け、赤外線灯を付することにより、或る程度の暖房も可能となりました。この屋外運動場には樹木を植えたので、スタンドを後方より見た場合の外観もよく、収容した鳥たちも、非常に元気です。目下ここに収容中の動物は次の通りですが、今後は、寒気に弱い動物の冬期収容場としても利用する予定です。(第1図、第2図、写真1)
ルリカケス(Lalocitta lidthi) ヤマムスメ (Urocissa caerulea) キムネオオハシ (Raniphastos ariel) フィリオオハシ (Selenidera maculirostris) カササギサイチョ ウ(Anthracoceros albirostris) アカハシサイチョウ (Rhinoplay vigil) ワライカワセミ(Dacero gigas) セイケイ (Porphyrio poliocephalus) ジュズカケバト (Streptopelia risoria) オオコノハック(Otus bakkamoena) フクロウ(Stris uralensis)
次に屋内観覧通路は、旧カバ舎の通路をそのままでしたが、その床面を約15cm低くくし、その後方の壁を取り去り、後方に観覧通路の床面からの高さ30cm、奥行1.5 m の通路を新設しました。この通路は、前記のとおり従来の通路の後方に、室を拡張して設けたので、従来からあった大きなコンクリートの柱は取り去ることができず、観覧上はに支障になっていますが、これは止むを得ないことです。しかし今までは、極度に混雑をきたしていましたが、この増設により、相当混雑を緩和することができました。尚従来の通路の床を15cm低くしたのは、寝室のガラスの上端が低いので、後方に新しく、高い通路を設けると、室内の動物が、後方の台上に上った時見にくくなるので、新しい通路の高さを、なるべく低くくするためです。(第3図、写真2)
前記の屋外スタンドの面積は 89m2 、エーピヤリーの金網の部分は60m2、室内の観覧通路の拡張部分は33m2で、その総工費は3,960,000円でした。
総括
1.上野動物園の類人猿舎は非常に混雑したので、運動場前並びに寝室前の観覧通路を拡張しました。
2.屋外では通路の後方にスタンドを作り、観覧通路よりの高さ90cm、奥行き 1.6m とし、更にその後に3段の階段を設けました。
3.スタンドの後には鳥類用の Aviary を設けました 。
4.屋内では、観覧通路の後方に、巾1.6m で、高さ30cm の通路を設けました。
5.本改造は、非常に混乱した類人猿の観覧者の混雑緩和に大変役立っています。
SU M M A R Y
Since the new ape house was opened to the public in 1957, the apes (3 gorilias, 3 chimpanzees, 2 orang utans) attracted the visitors so much that the visitor passages, both inside and outside, were very much crowded, and so we remodeled those passages and they are very successfui tc moderate the congestion of spectators, Behind the new constructed stand of the outer passage, an aviary with heating system was constructed and 12 kinds of birds are kept therein.