第4回水族館技術者研究会について

発行年・号

1960-02-01

文献名

飼育下グラントシマウマの発情日数と発情周期

所 属

下関水族館

執筆者

ページ

19〜21

本 文

広島市安佐動第4回水族館技術者研究会について

下関水族館

Ⅰ 日程
第1日(2月15日)
09.00~09.30 受付(下関市役所)
09.30~09.40 開会挨拶 下水族館長
09.40~10.20 研究発表
10.20~10.30 歓迎挨拶 下関市長
10.30~12.30 研究発表
12.30~13.20 昼食
13.20~15.40 研究発表
15.40~16.40 懇談会
16.40~17.30 下関水族館見学
18.00~21.00 懇親会
第2日(2月16日)
09.00~11.30 特別講演(於農林省水産講習所)
今後の水族館のありかた
九州大学教授 内田恵太郎氏
アメリカの水族館
水産講習所教授 石山祝融氏
ニュージランドより帰って
水産講習所教授 松井 魁氏
11.30~12.30 昼食
12.30~16.30 見学
大洋漁業株式会社第二冷蔵庫、門司市和布刈
水族館
16.30 解散

Ⅱ 出席者名簿(受付順)
講師:九州大学教授 内田恵太郎氏
水産講習所教授 松井魁氏
同 石山礼蔵氏
出席者:杉浦宏(上野動物園)藤田矢郎(和布刈水族館)溝上昭男(宮島水族館)泉幸四郎(越前松島水族館)粟倉輝彦(北海道立水族館)中村幸昭・片岡照男(鳥羽水族館)荒賀忠一(みさき水族館)荘司栄一(大洗水族館)吉田啓正(須磨水族館)小倉政雄(江ノ島水族館)力丸喬之(志賀島水族館)高橋博之(別府水族館)中原官太郎(桜島水族館)伊藤銀造(堺水族館)岩本勇二(宮大路動物園)上村順一(西海橋水族園)斉藤洋(升天島水族館)本川富也(長崎水族館)山本重夫(小樽水族館)鈴木庄平・竹下忠太(熱海水族館)水江一弘(長崎大学助教授)田中耕之助·新田正雄·岡本仁氏·内田安生・堤俊夫・中西輝磨・矢田優・窪田正文(下関水族館)

Ⅲ 研究発表(要旨)
座長 杉浦宏(上野動物園)

1 魚の微生物疾患治療の現状と対策
和布刈水族館 藤田矢郎
 
(1) 現在の魚病学は淡水性の養殖魚を中心として発展して来たため、海産魚の病気については多くの知見を持たないことを述べ、海産魚の魚病研究に於ける水族館の位置と使命を考察した。
(2) 現在治療に使用されている薬品の使用法及び作用と微生物との関係。
(A) 消毒又は殺菌を目的とするもの。微生物が直接これ等薬品溶液にふれねば効果はない。外部寄生性のものに適用。
(B) Sulfa剤や微生物製剤の体内投与。体内又は血液内に侵入するものに適用。
(C) 免疫学的製剤による予防と治療。
(3)対策
(A) 病気と病原微生物の関係を明らかにし病原菌の純粋分離及び培養を行う。
(B) 然る後に他の医学分野と比較して療法を考究する
(C) 免疫的製剤を作成する。将来水族館及び養殖事業に於て大量の魚を飼育する上に予防接種は絶対必要なことと思われる。

2 宮島水族館におけるオサガメの飼育経過について
宮島水族館 溝上昭男
当館では、瀬戸内海で捕獲されたオサガメを22日間飼育した。オサガメの前半身をロープで縛り、ブールの陸に衝突するのを防ぎ、アジ、サバ、イカ類によって投餌を試みたが、成功に至らなかった。運搬時ないし飼育中に生じた外傷に対して、種々治療を行い、かつ注射による栄養の補給につとめたが、外傷は悪化し、斃死の原因となった。オサガメの飼育に当っては、広いプールに収容し、外傷の発生を予防することが先ず必要であると思われる。

3 ウミタナゴの孵化実験
越前松島水族館 泉 幸四郎
ウミタナゴの親魚を採集し、仔魚の孵化を観察、さらに仔魚を水槽及び屋外天然ブールに放養して、その成長を比較した。仔魚の孵化において、水温18.0℃の場合の孵化率は54.7%、19.4℃においては69.5%を示し、水温によって歩留りに差が見られるので、水温を調節すれば更に成果を上げることができるのではなかうろか。
仔魚は天然プールに放養したものがよい成長を示した。

4ハナゴンドウ鯨の飼育について
西海橋水族園 上村順一
当園では前後2回に亘り、ハナゴンドウ鯨11頭収容、飼育した。第1回の6頭は何れも異物による胃閉塞のため、28日以内に斃死した。第2回はクレモナ網製の生簀網に収容、飼育した処、5頭のうち2頭は1回同様胃内異物が原因で斃死したが、飼育期間は前回より全体として遥かに延び、2頭は収容後150日を過ぎた現在なお飼育中である。
胃内異物としては、ビニール袋、木片、竹片、藁屑などで、ハナゴンドウの飼育環境として、これらの異物を除く注意が必要と思われる。

5 イルカ類の調教経過
江ノ島水族館 小倉政雄
江ノ島マリンランドではイルカのショウを供覧しているが、それらのうちカマイルカ、バンドウイルカ、ハナゴンドウクジラ3種の調教経過を報告する。調教種目はカマイルカはジャンプ、輪くぐり、ハイジャンプ、球入れ、バンドウイルカはバスケットボール、ヘッデイングボール、バレーボール、ハナゴンドウは握手である。

6 バンドウイルカの外傷の治癒例
熱海水族館 鈴木庄平、竹下忠太
当館ではイルカ池の構造がわるく、台風時の波浪の為イルカ斃死の原因になっております。
昨年(1959.9.27)の15号台風の際、イルカ3頭、台風通過する迄、14時間陸上避難しました。運搬時に暴れ、頭部打撲、鰭に切傷、安置状態のとき鰭に無理をし、3日目より傷口、鰭付根が化膿しました。
その治療の為、ペニシリン、ズルフアミン、パンビタン錠を経口投与、ペニシリンとパンビタン、ズルファミンとパンピタンを1日2回併用、薬量は人間の2~3倍使用しました。治療後、病状は1~2回停滞したが順次回復、2頭は1ヶ月で完全に治り、1頭は再発し回復無理かと思いましたが、発病後3ヶ月で完全に治ゆしました。

7 無足類飼育における敷石の考察
下関水族館 堤 俊夫、高井 徹
ウナギ目魚類のうちギンアナゴ、ゴテンアナゴ、ホタテウミヘビの3種を水槽で飼育し、それらの潜入行動に関して得られた知見より、種に応じた底質を選んで与えることが、飼育環境条件の中でも重要なことである。

座長 藤田矢郎(和布刈水族館)

8 熱帯性海水魚の鰓病について
北海道立水族館 栗倉輝彦

(本誌に掲載)

9 水族館用水における地下海水の特性について
鳥羽水族館 片岡照男
当館では飼育用水の1部に地下海水を使用しているがその水質を調べ、用水としての地下海水を検討した。

10 魚病治療の面より見た開放式大水槽の利用について
みさき公園自然水族館 荒賀忠一

(本誌に掲載)

11 昭和34年度の当館における飼育
須磨水族館吉田啓正

(本誌に掲載)

12 マツカサウオの餌付について
熱海水族館 鈴木庄平、竹下忠太

マツカサウオは従来餌付不能のまま、餓死に至らしめていたので、魚の切身に切替える一過程として、種々の活餌の餌付を試みた。活餌として、コエビ、ワレカラ、イソメ、ミミズを使用したが、これらの中ではワレカラが最も適していた。ワレカラに鮮魚の切身を混ぜて与えた場合、直ちに摂餌するものも見られ、回を追うに従ってその率はよくなった。ひきつづき鮮魚のみを与えて観察を続けた処、供試魚10個体中3個体までが完全に鮮魚の切身を食べるようになった。

13 餌料と水質について
下関水族館 内田安生、中西輝磨

14 鹹水性白点病について(第2報)
下関水族館 岡本仁氏 窪田正夫

Ⅳ 懇談事項

座長 伊藤銀造(堺水族館)
1 魚類の分布について。上野動物園(杉浦)
動物の分布について、記載のない地方に分布してある夢があるので充分調査してはどうかとの提案があり、鳥羽水族館より賛成、みさき、和布刈水族館より、海水魚の場合はっきりしにくいのではないかとの発言あり、座長から珍らしい例、わかってゐる範囲について協会へ報告する様発言あり、結局、松原氏の魚類の形態と検索、渋沢氏の魚類方言の二冊に基準において、それに出ているもの、誤り又はそれに出ていない方言等をしらべ協会に報告するようきまった。
2 魚の微生物疾患治療の現状と対策について各位の経験と意見を承りたい。和布刈水族館(藤田)
3 鹹水性白点病対策委員会の設置。江ノ島水族館(広崎)
座長より2、3の二つは一諸に採りあげたいとの発言あり、和布刈水族館より白点病及び魚体に附着するカビ等をグループを作り共同研究したい、江ノ島水族館より白点病のみの全国的組織を作るとの二つの意見の結論はでなかった。
4 月報、年報の資料提出について。上野動物園(杉浦)、協会事務局より月報、年報の資料提出が水族館の場合、非常に悪いので今後各館とも必ず提出してほしいとの依頼あり、各館より種々意見がでたが一応本年はこのま在続して来年までにどの様な方法で表すか考える事とした。なお年報には1年間に飼育した全魚種についてまとめる事とした。
5 内式簡易濾過装置による飼育技術と将来について。越前松島水族館(泉)
みさき水族館(荒賀)よりみさきに於て行っている方法の説明があった。即ち、水槽は2~3tで1時間で循環しており、投餌後は残り餌を充分とる事、水は変える必要がない、又魚の調子は一般水槽と変らない。
6各館における餌料の調査。みさき水族館(荒賀)
昨年みさき水族館より、各館に調査書を送って協力開ったが現在29館しか回答が来ないので未提出の館にはもう一度書類を送って提出を願い纏めてから発表したい。よつて未提出の館は御協力願いたい。7 魚類の展示法について各館の意見を承りたい。下関水族館(岡本)
時間の関係上他日調査用紙をお送りするので御協力をお願いする。
8 次回研究会の開催について。下関水族館(岡本)
第1案として北海道地区、第2案として関東地区があげられたが一応北海道地区にお願いする事とし期日は5〜6月が好ましいとの意見があった。

Ⅴ 特別講演要旨

1今後の水族館のありかた
九州大学教授 内田恵太郎氏

まず水族館の性格を1,営利を目的とし、みせ物的娯楽設備の完備したもの。2.社会教育施設の1部としての水族館及び3,研究施設としての水族館と3つに大別して、その各々につき説明し、次に水族館運営につき今後の問題点として水質管理、飼料、魚病等につき意見を述べ更に博物館施設として当然水族館のはたす社会教育的意義について、説明板ガイドブック等につき述べ結論として水族館という特殊な、しかも絶好の研究場をそれに従事する飼育従事者はいかんなく利用し、研究室で出来ない研究を行うと同時に社会教育的の面からも、その教育の生きた場として多くの指導的な配慮の上で今後の運営に当らねばならない、と結ばれた。

2 アメリカの水族館
水産講習所数授 石山礼蔵氏

1昨年暮れより昨年始めにかけて、アメリカで見学されたスタインハート、ワイキキ水族館及びマリーンランド等の施設或は、その職員の待遇等をスライドを入れて説明された。

3ニュージーランドより帰って
水産講習所教授 松井 魁氏

昨年から本年にかけて行かれたシンガポール、オーストラリア、ニュージーランド各地の事情を矢張りスライドを入れて説明された。