バン・クリーフ水族館
発行年・号
1960-02-01
文献名
飼育下グラントシマウマの発情日数と発情周期
(Van Kleef Aguariuni)
所 属
須磨水族館
執筆者
井上喜平治
ページ
15
本 文
広島市安佐動バン・クリーフ水族館
Van Kleef Aguariuni
須磨水族館 井上喜平治
常夏の国シンガポールは、気温年平均26.4℃、年較差2.0℃やや淡青い海に囲まれた島である。シンガポールはマラッカ海峡を航海する人々の必ず寄港する処で、この水族館は旅行者にも比較的良く知られ、又シンガポール自慢の一つである。水族館はシンガポールの中心部に近いキング・ジョージ五世公園の一角に建っている。その近代的な建築は背景の緑の森に映えて実に美しい。パン・クリーフと云う名称は、この水族館の建設費の大部分が、この町に長らく住んでいたパン・クリーフ氏の遺産によっている為である。又この水族館は市営で、1955年に開館され現在に至ったものであって、当時の建設費は600,000弗(邦貨の約7,000,000円)である。
水族館で使う海水は、シンガポール川口に近い海岸から3/4マイル離れたFort Canning Hillのプールにパイプで一度汲上げ、それを更に水族館に導いて、泡過、循環して使用している。又淡水は井戸水及び雨水を集めて同様に使用している。そして地下貯水槽には海水80,000ガロン、淡水60,000ガロンを貯え、毎月その1/2量の新しい海水並に淡水を夫々補給している。観覧室は年中冷房しており、観覧用水槽は海水魚用は大型のもの17個、小型のもの10個、淡水魚用は大型のもの9個、小型のもの36個であって、水槽には1 1/4インチのガラスを使用している。又この他病気治療や準備のための特別水槽を持っていると共に、魚類の採集船や魚類運搬のための貨物自動車を持っている。展示している水族は300種に近く、数量は4,000尾に達している。この水族館に人気があるのは、何と云っても、シンガポールを取巻く珊瑚礁の色も鮮かな生物を数多展示しているからである。中でもイソギンチャクとクマノミ(魚)の共生は、色の鮮かさと云い、魚の行動の面白さと伝い、特筆すべきもので3種類の共生の様子がみられる。その中2種類はシンガポールの近くで採取したもので、残りの1種類はセイロン島で採取したものである。其他に倒立して泳ぐヘコアユ(近くで簡単にとれる)物の長いタツノオトシゴ(クダタツ)青い縞のある各種のエンゼル、赤い頭をした美しい数種のベラ類、ツバメウオ、ミノカサゴ類、沢山の種類のスズキ類、カレイ類、ハコフグ、コバンザメ、ウツボ、トビハゼ、カエルウオ、クライミング・パーチ、サメ類、アカエイ其他増等が人目をひいている。淡水魚では大きくなるグラミー、アフリカの肺魚(Protopterus)、アマゾン川の人喰い魚(Firanha)、Featikerback(マレー語でBelida)電気ウナギ、スカレア、3呎にもなるマラヤの大ナマズ口で卵を育てるアフリカ産のシクリッドの数種、胎生魚のグッピー、ソードテイル、黒いモーリー、其他に海産の色を淡水に馴化した鉄砲魚、エンゼル、スキャット、フグ等は人気がある。爬虫類では海蛇の類、アオウミガメ、アカウミガメ、ベッコウガメ等を飼育している。
バン・クリーフ水族館の全景
オサガメも時々飼育しているが、これは水族館で余り長く生きない色である。
1年間の入場者総数は約25万人、入場料は大人(16才以上)30セント、小人(3才以上)20セントである。館長はA.Fraser-Brunner氏で、次長はS.A.Victor Nathen氏である。館員は館長以下14名、開館時刻は月曜日は10a.m→0.30p.mと4p.m→7.30p.m.火曜日から土曜日までは10a.m.→0.30p.mと4p.m.→9.30p.m.日曜日は10a.m.→0.30p.m.と1.30p.m.→9.30p.m.である。但し金曜日と祝日は営業を休んでいる。