昭和34年度の須蘑水族館における飼育について

発行年・号

1960-02-01

文献名

飼育下グラントシマウマの発情日数と発情周期

所 属

神戸市立須蘑水族館

執筆者

吉田啓正

ページ

6〜7

本 文

広島市安佐動昭和34年度の須蘑水族館における飼育について

神戸市立須蘑水族館 吉田啓正

はじめに

第4回水族館技術者研究会に発表する講演題目を何にするかについては、予め飼育会議において討議された。その結果、一年間の飼育概要について報告することになり、海水・淡水・熱帯・屋外の各水槽担当者よりデータを集め、整理して以下述べることにする。

1 収容水族
本年収容した水族は第1表の通りである。
この中採集によるものは、海水々族、魚類49種403点無脊椎水族25種183点、合計74種586点、淡水々族蛙6種である。

2飼育環境
本年に於ける水温、水質の測定値の一部を第2表に掲げる。カッコ内はそれを示した月を示す。尚水温は月別平均値。
本館海水々槽は水族増加のため、又屋外大水槽は8月初旬より海岸の水質悪化、海水の補給が困難であった為、ともにpH・A1が減少し、大量の生石灰を投入せねばならなかった。
本館水槽の飼育海水は、8月に事故の為、淡水が混入したことと、冬期を除き採水した海岸の塩分が低く、このため大量の塩を投入せねばならなかった。

第1表

第2表

3 育概概況
a 本年初めて入った水族とその生存期間。(カッコ内は生存期間、以上は現在生存中を示す太字は採集したもの)〔海水々族〕アオブダイの一種(2日)、テングダイ(2日)、クロモンガラ(4日)、センネンダイ(5日).インモンガラ(15日)、ヒレコダイ(17日)、シマキンチャクフグ(14日)、ツュペラ(20日)、ハシナガウバウオ(25日)、キミオコゼ(2カ月)、ニジギンポの一種(チャイニーズフィッシュ2カ月半)、キンセンスズメダイ(2カ月半)、チョウチョウウオの一種(4カ月)、セタカスズメダイ(6カ月以上)、コガシラベラ(6カ月以上)。
〔淡水々族〕オオクチクロマス(3カ月以上)、アユモドキ(6カ月以上)、オオナマズ(7カ月以上)。
〔熱帯水族〕マタマタL(6カ月以上)、フェザーバック(8カ月以上)、テラビヤ、コリドラス、ジュリー、レッドコリドラス、クラウン・ローチ、デルモゲニー(いずれも生存中)。

B 前年迄長生きせず、本年は長生きした水族
〔海水々族〕モンガラカワハギ(2カ月半)、キツネベラ(5カ月半)、ホンソメワケベラ(6カ月以上)、アオブダイ(9カ月以上)、ヨスジフエダイ(8カ月以上)、ムスメベラ(8カ月以上)、イツトウダイ(4カ月以上)、アカマツカサ(4カ月以上)、フーライチョウチョウ(4カ月以上)、カンランハギ(4カ月以上)。
〔淡水々族〕ハス(60日)。

C その他特殊な水族とその飼育
〔海水々族〕大クエ(23kg)1年3カ月生存中、サザナミヤツコ等南方系小魚1年半で生存中。(単独循環水槽で飼育)ムラサキハナギンチャク4カ月で生存中。
〔淡水々族〕金魚11品種の収集と飼育、一般水槽の照明強化による水草の増加。

D 魚病とその対策、効果
〔海水々族〕白点病:年間を通じ全般に出たが、昨年、一昨年に比較し、かなりの水族が之に耐え長生きする様になった。(対策)ソーブレスソープによる消毒、塩酸キニーネ20g/tonの投入。(効果)予防、及び初期症状には効果があったものと思われる。但し、フグ類等、特に白点病に弱いものには、余り効果が認められなかった。吸虫害多少あり、淡水泳浴効果あり。
〔淡水々族〕白点病:一部水族に害があつた。(対策)C1.7~10‰の塩水療法、効果あり。その他オオクチクロマスの水生菌害メチレンブリュー、効果あり。イカリムシ害→デュプレックス1/106液→未成虫に効果あり。アユのビブリオ菌病→サルリールを餌に混入し効果は不明。
〔熱帯水族〕白点病:余り見られず、出た場合は塩酸キニーネにて治療・効果あり。
e餌料〔海水〕アジ、イカ、エビ、海藻、メダカ、〔淡水〕イトメ、ねりえ、アジ、はえ、〔熱帯魚〕イトメ、ごかい、グッピー、レバー等

f 飼育関係職員
以上を実際に扱った職員数は16名(飼育12、機械4)であった。

おわりに
本年度は、開館以来3年目に当るが、以前の2年間に較べ水族の飼育状況は、かなり安定して来た。白点病による被害は、まだ相当程度見られたが、り病後、治癒して生残ってゆく水族が若干見られる様になった事は大きな特徴である。また職員が一般に施設及び飼育業務に慣れて来て、水質の変化、魚病等に対して時宜を得た処置をとれる様になった事は、飼育状況の好転に役立ったのと考えられる。しかしこれも状況が極めて悪かった前年との比較であり、今後更に考慮せねばならぬ点は多々あるものと思っている。