ツバクロエイの出産
発行年・号
1959-01-02
文献名
飼育下グラントシマウマの発情日数と発情周期
所 属
須磨水族館
執筆者
ページ
46
本 文
広島市安佐動ツバクロエイの出産
須磨水族館
1959年9月14日に、兵庫県高砂市でとれたツバクロエイGymmura bimaculataを、屋外プール(300トン)に放養した。体長70cm、体中140cm、体重約20kgの相当大きなもので、尾は切られており、方々にすり傷をうけていた。餌つきは確認できなかったが、同じプールのハマチ、オキナヒメシ等の死体がほとんど上らないことから、サメ類と共に、喰べていた可能性はある。11月29日朝3尾、12月2日朝2尾の子を出産し、12月3日死亡した。飼育中の最高水温は27℃、最底は死亡時の13.5℃であった。
産まれた仔はすぐに本館内の小予備槽にうつして、経過をみたが、いずれもその翌日の朝には死亡していた。全長124mm、体長90mm、体巾150mm、体重469であった。
仔は、色素の発達もゆるく、目が少しとび出しており、腹部の皮がすき通っていて、内臓がまる見えである点などから、低温のため早産したのではないかと推定している。
出産数5尾は、他のエイ類の記録(当館で調べたアカエイの1例では14尾)から見て、少なすぎるようなので、死亡した親の胎内を調べたが、1尾ものこっていなかった。同プール内のサメ類(主にドチザメ)が、出産後すぐに喰ってしまったということも考えられる。ただ、当時は低温のため、サメの餌付がわるかったので、はっきり断定はできない。
なお、ツバクロエイは、トビエイとは対称的に、夜も昼も底にはりついたままでめったに泳がない。従って、いくら大きくて立派なものでも、観賞価値は低いようである。
写真左、小予備槽で飼育中の仔、写真右、死亡直後の腹面