アフリカ生態園の建設について

発行年・号

1959-01-01

文献名

飼育下グラントシマウマの発情日数と発情周期

所 属

恩賜上野動物園長

執筆者

古賀忠道

ページ

26〜27

本 文

広島市安佐動アフリカ生態園の建設について

恩賜上野動物園長

古賀忠道

1 計画の概要
各動物収容場の形式は放養式とし、展示については動物地理学的方式を採用した。全体的には、後方にいくに従って高くなっているので、一番前から全体がながめられ総合的景観を現している。
特に本園の特徴としては
1) 寝室は全部観客通路の下にとったので(ライオン、ヒヒ等を除く)外部からは見えない。
2) 冬放養場の間は巾2.7mの濠で仕切られていて、そこに動物の通路(18m)と飼育係通路(0.9m)とがある。
3) 動物はその通路を通り中央のロータリーに行きここから扉の開閉により何れの運動場にも出られる。
4) 全部がコンクリート疑岩で営まれているので、見物人通路の内側その他にできるだけ熱帯性植物を植えた。

2収容動物
アフリカ産の動物だけを集め、各運動場にはできるだけ多種類を同居させるよう努力した。
現在の飼育動物は次の通りであるが、更にその種類を増すよう努力している。
ライオン、バーバリーシープ、マントヒヒ、キリン、シマウマ、ウシカモシカ、エランド、ダチョウ、サイ、カバ、イボイノシシ、フラミンゴ、エジプトガン

3各収容場の特徴

Ⅰ) ライオン放養場
A) 隔堀の向は約8mであるが2段になっていて、低い方は客側から6mである。
B) 飼育係通路は寝室と運動場との間にあり、その下は動物の通路になっている。
C) 運動場にはなるべく木を植えるように試みた。
D) 後方の壁の高さは約5.5m
E) 別に従来の形式の小運動場を設けたが、ボルトの代りに平鉄を使用した。

Ⅱ) 河馬収容場
寝室、運動場共に放養式とし、観客側にプールを設けたその深さは約2.1mである。寝室では空気、水共にガス加温装置を設けた。

Ⅲ) 他の動物について

A) 運動場の濠の縁には簡単な、低い柵を設けてあるが、之は将来は取り去る予定である。
B) 動物の寝室の暖房は軽油フアーネス式のものを用いた。

Ⅳ) 其他の施設
ライオン放養場の床下は約500の座席を有する講堂建設の予定であり、ライオン寝室の下の2階には図書館が設けられる。又飼育係員室、調理室等は、観客通路下に作られている。

4 管理
同一場所に異種類のものを雑居させるので従来と異った色々の面白い現象も把っている。又運動場に出す時も同じ通路を何種類もの動物が通るのでこれも従来と異った手数を要する。動物の種類や雑居の方法等将来の研究問題が多い。

5経費及び工期
本工事は、予算の関係で約5ヶ年を要した。即ち昭和29年1月より同年4月に至る間で、その間の工事費は約8,000万円に達した。そして尚最前方のフラミンゴ草原及び講堂等の工事費として、少く共2,000万円を要するものと思われる。