臨床記事
発行年・号
1959-01-01
文献名
飼育下グラントシマウマの発情日数と発情周期
所 属
上野動物園,野毛山動物園
執筆者
ページ
23
本 文
広島市安佐動臨床記事
①くろさい(雄)のレプトスピラ症
上野動物園
経過 5月18日、排便なき故、注意中、翌朝、赤褐色尿を泄し午後食思減20日には元気消失、努噴を盛んに試みるが便状を見ないので、午後グリセリン水浣腸を施こし相当量を排したが食思が無くなった。ShinoTestにより潜血反応⧺、蛋白反応⧻、ウロビリノーゲンー、ビリルビンー。依て血球素尿症と一応判定。
爾後赤色尿が連日続き鼻汁また帯赤色となる。
21日、耳静脈より採血して血液検査を行った。赤血球数736000、白血球数22500、翌日、活気食思がや出て来た。体温38.4、呼吸10、午後、東京大学の山本教授等来診、溶血性変化に起因する疾病即ち原蟲症とレプトスピラ症を疑うに到った。
23日、体温37.7、呼吸数10、赤色尿は依然髷督、午後耳鼻等の諸感覚鋭敏となり、注射処置が意に任せぬようになった。運動亦活潑となり眼結膜の充血が減る。
24日、朝は横臥し、体温37.6、脈搏数64、呼吸数9、午後は昨日同様運動稍活潑化、尿及可視粘膜の帯赤は減って来た。
東大より次の様に血液学的所見を連絡あり
1.Haemogrmm
好球中 桿 型 13.5%
分葉型 45%
淋巴球 23.9% 単球12% 好酸球0.8%
好塩基球 0.2%
左方移行と思はれる。
2.血液中に原蟲類は認めない。
25日、一般動作は朝来活潑となり、可視粘膜の帯赤色は減じ食思はあり、消化状態は良い。
可検接種動物(予め犀尿1cc.をモルモット腹膣内注入)に発熱現象を認めた。
26日、可視粘膜の充血は依然残遺するが汚穢色は消失した。
体温37.7、呼吸数10、脈搏数55
接種動物モルモット斃死し、剖検したが心、肺に点状出血が悲しい。27日、東京大学より血清学的診断、Leptospira ichtero-hamorragia 1000倍、陽性にして、住血原虫を認めないとの連絡があった。
体温37.6、脈搏数56、呼吸数10、尿量が減り、軟便食思は尋常となる。
28日、体温37.7、脈搏数72、呼吸数12、罹患してより初めて飲水を認した。一般状態良し29日、病性著しく良転を認め、可視粘膜及尿の帯赤は全く褪色する。体温37.6
爾後本月末日に到るも益々建徴を維持、向上しつつある。
治療
病暦2日(月5 20日)のによりアクロマイシンV2錠、サイアヂン20錠、パンビタンM10錠、6時間毎に投与し翌日よりは上記の他、ストレプトマイシン20グラム、バイシリン1500万単位の筋注を実施、22日までストレプトマイシンの連続注射を行う、24日よりは日量ウルソ錠10錠、バント5錠、パンビタンM5錠、メルチオB12 20錠、ビスラーゼ100gを連投、病状軽快後は本月12日より日量メルチオB12 20錠、パンビタンM5錠、ビスラーゼ100gづつを給与し続けた。なお本月20日、一層薬効の確実性を増すためストレプトマイシン3g次で21日同剤を20g投与した。
② あかかんがるー(雌3-4才)の放線菌症
野毛山動物園
経過 昭和34年2月、右膝部の腫脹で上診、腫脹は浮腫様であったが、放線菌症の疑にて、ペニシリンおよびスルファ剤の注射により短時日に軽快し、以来順調に飼育されていたが、6月27日食欲不振をもって再診、右下顎枝の腫脹と流涎を認め、直ちにペニシリンによる治療を開始し、第3日目より食欲は回復して来たが、腫脹に著変はなく、継続治療中である。
腫脹部の穿刺によって得られた材料(血様液)による精査実施中である。